ゲノム科学と

がん医療のこれから



Q&A

講演中に受け付けた質問への回答を掲載しています。

たくさんのご質問ありがとうございました。

質問1.高齢になることで遺伝子が変異する確率が高まり、また、その変異ががんのもとになっている可能性があるという事でしたが、遺伝子の変異が起きる人(その変異が悪影響を与えるかどうかに関わらず)には何か特定の傾向などあるのですか?

(回答:土原一哉)
遺伝子変異が生じる原因には、「外的」なものと「内的」なものがあります。健康な人でも日常的に体の外側から遺伝子を損傷する刺激にさらされています。紫外線、放射線被ばく、喫煙がよく知られていますが、その他にも食物の中の発がん物質、環境中の化学物質、活性酸素などがあります。これに対して体の内側では細胞が持つ様々な修復機構が働いてそれらの損傷を修復し、がん化を防いでいます。

しかし大量の損傷を受けた場合や、修復機構が十分に働かない時には、遺伝子の傷の直し残しや直し損ない、すなわち突然変異(体細胞変異)が生じます。また加齢とともに突然変異が積み重なることが知られています。一方、損傷修復に関連する遺伝子を生まれつき持っていない、あるいは修復機能が弱い場合は、遺伝子の変異が起きやすくなります。


がんが多く発症する家系の解析から、遺伝子修復に関わる遺伝子の機能が低下していることが明らかになり「遺伝性腫瘍」の原因遺伝子として同定されてきました。こうした遺伝的な要因(内的な要因)はがんの発症のリスクになりますが、一方で生活習慣を変えることで、先に述べたような外的な要因のリスクを下げることもできます。まとめますと、遺伝的な要因(内的)と環境による要因(外的)の双方が関連し合って、遺伝子の変異、がんの発症につながっています。


質問2川嶋さんがおっしゃった様に、義務教育課程でゲノムやがん医療に関する知識をはじめとした医学的な知識を伝えていくべきであると考えています。これから先、現在の教育から医学的知識を伝えていけるような教育へと変化させるために、私達若い世代にはどのような事が出来るのでしょうか。

(回答:土原一哉)
がん教育は、学習指導要領の改正により小学校では令和2年度から全面実施となり、中学校では令和3年度から、高等学校では令和4年度から必修化されます。https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1370005.htm

 

(回答:川嶋実苗)

土原先生も触れられていましたが、最近ではPPI(患者・市民参画)活動を研究の一環で実施することが推奨されて来ておりますし、AMEDでもPPIガイドブックを作成し、発信していますが(https://www.amed.go.jp/content/000055212.pdf)、義務教育の段階から、医学の発展のために(医学研究において)こういうことが行われているのだ、という事を知識として持っていただくためには、学習指導要領に入れていただく必要があります。そのためには、国会議員や文部科学省に、義務教育課程においてゲノムやがん医療など、最新の情報を得られるような授業(カリキュラム)を編成していただけるよう訴えるようなロビー活動をしていく、という他にも、出身校や子供が通っている学校、近隣の学校などでそういった情報を発信できる機会を作る、YouTube配信をする、e-learning教材を作って発信する、そういった知識を得られるようなアプリケーション(ゲーム)を作ってリリースする、といった手段はあるかと思います。

質問3-1抗がん剤の症状管理・服薬管理のコンパニオンアプリ等で生成されるデータは、どのように活かされるか?

(回答:土原一哉)
デジタルヘルスの実用例としてご質問のような各種のアプリが、「プログラム医療機器」として今後国内でも申請、承認され、保険診療の中で利用されることが予想されています。これらの医療機器で取得されるデータは、これまで医療機関で実施されている検査等のデータと同等に扱われ、その患者さんの診療の目的に用いられます。診療に用いられたデータを新しい医療機器等の開発など、二次的な目的で利用する際には、あらかじめ適切な方法でそれぞれの患者さんに説明をし、同意を取得する必要があります。厚生労働省でもこうした医療機関にあるデータや診療情報を利用した、より迅速な医療機器開発に向けて審査制度等の改革を進めています。

参考:DASH for SaMD, https://www.mhlw.go.jp/content/11124500/000737470.pdf

質問3-2ゲノム等を含む要配慮個人情報(特に、レベル3以上)の管理するインフラ(例えば、情報銀行?)構築のために必要ではと考えられる標準化や、アーキテクチャーとは?利用者が自分の情報をどこに配置してどのように活用するのかといったいわば高度情報配置力や新規技術利活用力のようなこれからの時代の基礎力を養成するための人材育成とは?

(回答:土原一哉)
医療機関等にある診療情報を有効に利活用するために、「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(「次世代医療基盤法」)」がありますが、特定の個人を識別できないように加工された匿名加工医療情報を対象とするため、個人識別符号であるゲノム配列情報を含む要配慮個人情報は対象とされません。また情報銀行は本人の同意のもとで個人のデータを適切な事業者へ提供し、事業者から個人へ便益を還元する仕組みですが、ゲノムデータの利用は現在のところ行われていません。ただし、医療の世界では、患者本人がゲノム等を含む要配慮個人情報を提供することで便益を受ける可能性が高く、また新薬の開発など社会的な需要も多いことから、「個人を起点としたデータ流通」の仕組みを作ることは非常に重要です。個人情報保護、プライバシーの保護を含めた法規制等のルール作りが必要であるとともに、個人が預託したデータの利活用についてコントロールできる仕組み(ダイナミックコンセント)、データが適切に流通していることを保証(トラスト)する仕組みと、それを可能とする情報技術が重要です。また流通するデータの相互運用性(インターオペラビリティ)を高める標準化規格として、特に医療ヘルスケア分野ではHL7 FHIR (Fast Healthcare Interoperability Resource)が注目されています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15747.html

 

(回答:川嶋実苗)
少なくともオントロジーの統一と、統合することを前提としたデータの構造化の仕掛けは必要です。どこまでの情報を繋げたいか、先に全体像を設計した上で、開発をしていくことで、統合の際の手間のかかり方が違ってきます。逆に、そのような仕掛けを備えたデータベース間を接続することは比較的短時間で簡単にできます。その上で、要配慮個人情報を扱うにふさわしいセキュリティ(暗号化とか認証など)を担保できる技術を導入することになるのではないでしょうか。


自分の情報をどこに配置してどのように活用するのか、情報銀行の枠組みを医療現場に適用する実証実験がSIP2期(大阪大学+三井住友銀行)において実施されています。これは、情報銀行に預けた医療データを、情報銀行の管理下で個人がスマートフォンアプリを通じて制御を行うものであり、預けられたデータの利用について、常に個人から許可を得る必要がある仕組みになっています(ダイナミックコンセント)。

ダイナミックコンセントでは、個人の同意疲れが指摘されていること、また、公衆衛生の向上に資する研究だからと言って、倫理指針のオプトアウト(個情法のオプトアウトより丁寧なオプトアウト)により使用することはできないので、医学研究の発展にマイナスの影響を与えうる可能性も指摘されています。そのため、常に同意が必要な入口規制から、契約等によりルールに沿った利用ができるところにデータを提供する出口規制(トラスト)に考え方が変わりつつあります。

人財育成に関しては、SIPの様な実証実験に参画することで、OJTとして学んでいけるとは思います。
参考:https://www.smbc.co.jp/news/pdf/j20220926_02.pdf 

質問3-3テーラーメイドでゲノムにマッチした抗がん剤が見つかっても、日本の制度で使用が認められていない薬剤の場合、どのようにすればよいのか?構築すべき制度とは?

(回答:土原一哉)
新薬の開発においては、有効性とともに安全性が重要な評価要素です。これらを科学的に評価するためには、統計学的に検証可能な一定数の患者さんを対象とした臨床試験が必要になります。ゲノム解析の進展により患者ごとのゲノムプロファイルの多様性が明らかになるとともに、対象となる患者さんの数は細分化(希少フラクション)され、従来型の臨床試験の実施が難しくなることが課題とされてきました。これを解決するために、①国レベルの大規模なゲノム解析(ゲノムスクリーニング)による対象症例のピックアップ、②希少フラクションに対して、複数臓器を対象にした(臓器横断的)臨床試験の実施と早期承認、③国際治験への積極的な参加などにより、より迅速に有効な新薬を承認する取り組みが日本を含む各国で行われています。それでも遺伝子異常にマッチし、生物学的な作用機序等から有効性が期待される治療薬が未承認の場合、保険外診療として投与を可能とする方法として日本では「患者申し出療養制度」の柔軟な運用が行われています。海外では、代替治療薬の存在しない致死的な疾患等の治療のために人道的見地から未承認薬の提供を行う制度(コンパッショネートユース)を整備しています。

質問3-4国立がん研究センターのモンスタースクリーン2のような、ゲノムとタンパク質、RNAといった網羅的にがんをみるデータは、どのように臨床での治療にフィードバックされるのか?そのために必要な仕組みづくりとは?

(回答:土原一哉)
がん細胞の生物学的特性を規定する要素は、遺伝子(ゲノム)の異常に加え、遺伝子変異を伴わないRNA(トランスクリプトーム)、タンパク質(プロテオーム)などの異常も含まれます。また最近ではがん細胞を取り巻く免疫細胞などの働き(がん微小環境)も治療の成否に大きな役割を果たすことが示されています。遺伝子変異を伴わないこれらの細胞に機能を評価するためにはトランスクリプトーム、プロテオームデータが欠かせません。すでにがん細胞や免疫細胞のRNA、タンパク質発現を指標に治療法を選択することは一部実用化されていますが、今後さらにこうした診断法開発が求められるため、網羅的マルチオミクスデータの収集と解析さらにはそれらのデータを研究機関や製薬企業、診断薬企業で共有することが重要です。

 

(回答:川嶋実苗)
治療にフィードバックされるためには、創薬や病気の早期発見のための検査などに繋げられる必要があるのではないでしょうか。そのためには、取得されたマルチオミクス解析により得られたデータを構造化して収集・保管し、製薬企業や検査会社などを含め様々なStakeholdersによって利活用されることで多角的に検討され、そこから得られたエビデンスを知識として蓄積していくことが必要なのだと思っています。

質問3-5講演で述べられているデータの人材育成に関連するような、システム化力やアーキテクチャー力とはゲノム医療にどのようなニーズがあるのか?経産省製造局が発行している「ものづくり白書」(特に、2017年以降)で議論されているデータ関連人材は参考になるのでは?

(回答:尾田正二 シンポジウム企画担当、新領域創成科学研究科准教授)
がんゲノム医療で必要なデータサイエンティストの資質・スキルとして、次の二つがあると考えています。(1)情報学のエキスパートとして莫大な情報を取り扱うためのスキル(とセンス)、(2)生命科学者・医学者として得られる情報から生命現象としてのがんを見定め、治療法を見つけるスキル(とセンス)、です。これら二つのスキルが有機的に連携していかないと情報の海で遭難してしまいます。二つのスキルをもった人材を育成し、供給していくことが現場に必要です。この観点だと、データ関連人材にさらに(2)のスキルを付加する教育プログラムが必要になると思います。

 

(回答:川嶋実苗)

(2)の人財に(1)のスキルを付加する教育プログラムでも良いですね。ただ、みんながみんなそんなに高い能力を持っているわけでは無く、1人の人ができることには限度があるので、日本中・世界中の(1)や(2)のスキル(それぞれの一部のスキルでも)を持つ人財が力を合わせる「場」を醸成するという手もある?(ものづくり白書は量が多過ぎて目を通し切れませんでした)

質問3-6自分も女性研究者として、ジェンダー議論に関する感想だが、性別などの属性は無関係で女性だから採用されることは不要で、ただ実力だけで評価すればよいと考えている。ジェンダー論は他のイベントの機会にお願いしたく、がん研究自体のディスカッションにフォーカスしていただきたい。女性研究者としては、性別のことに時間を割かないでいられる、研究内容自体に集中できる、多様性をわざわざ言うまでもない自然な研究インフラが望ましい。広義には、ゲノム医療を支えるために必要な要素として多様性が必要だというのは理解できるが、前半のゲノム診断、先端技術のテーマがより興味深かったため、ぜひ本題であるゲノムのディスカッションに戻っていただき、がん医療のテーマにフォーカスして学びたい。

(回答:尾田正二 シンポジウム企画担当、新領域創成科学研究科准教授)
ゲノム科学とがん医療の融合という先端の医療の議論の先に、まちづくりとの接点を議論することが今回のシンポジウムの意図したところでありました。医療の進歩が社会=まちづくりに作用し、まちづくり=社会の構造が医療ニーズを規定して医療に作用するという重要であって、当たり前なのにこれまで注視されてこなかった論点について深化させる議論を今回のシンポジウムでできましたことは新領域創成科学研究科としてのアイデンティティを十二分に発揮できたものと思います。


一方、ご指摘も全く正しいご指摘であり、次回以降のシンポジウムの企画におきましてしっかりと参考にさせていただきます。パネルディスカッションの時間として100分を確保してさらに休憩なしでしたが、やはり時間が足りませんでした。シンポジウムの企画・運営担当として不備をお詫び申し上げます。

質問4-1医療の世界はこんなに遅れてるんだということを、あらためて感じます。ひとりひとりの患者さんが主役なのに、まだまだ上から目線であることを。どうやって伝えるかがこの状況で語られているなんて。相手が受け取ることができるところにタマを投げることはコミュニケーションの基本ですよね。

(回答:土原一哉)
医療の世界では、パターナリズムが支配してきた時代から、患者の主体性、自律性を重視する方針に転換してきました。一方で医療提供者側と患者側では、判断に必要な情報の手持ちの量の格差が大きいために、主体性を求められた患者側が適切な判断に迷うということも往々に生じます。さらに実際の医療の現場では、患者は短時間のうちに判断を迫られることがままあります。これらのギャップをなくすためにも、患者に必要な情報をどのように伝えるかの議論は依然として重要な課題です。

質問4-210年ごとに社会とアカデミアを行ったり来たりすることが、リカレントだということの裏返しとして、アカデミアの方々も社会と行ったり来たりしないと、肌感覚が養われませんね。

(回答:土原一哉)
がんの治療開発の現場では、特に研究支援を行う部署で民間企業と研究機関の間で相互に行き来しながらキャリア形成を行う事例は増えています。研究者等が、大学や公的研究機関、民間企業等の間で、それぞれと雇用契約関係を結び、各機関の責任の下で業務を行うことが可能となる「クロスアポイントメント制度」の活用事例も増えています。

参考:https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/cross_appointment.html

質問4-3藤井くん現総長:学生時代のサークルの後輩は、極めて柔軟な思考があるので、新しい試みを始めるときにはぜひ巻き込んでください。東大と吉本との連携など、その例です。

(回答:出口敦)
藤井総長にもご支援を賜りつつ、教育・研究での学融合と知の冒険を進めて参ります。

質問5私は11年前に悪性リンパ腫を発症し、余命3年との予測に反して11年「生きて」います。現在71歳のジジイですが、穣先生に「拾われ」、自身ゲノム解析(熱帯病)に関わっています。

ガンを発症し、人間として「生きる」という事を考える機会が多くなって来ましたが、生命体は「生」を受けてから必ず「死」を迎えるわけですが、たかが80年の人生、俗に言う「ピンピンコロリ」が理想と思っています。病気と関わりにおいて「未病」を如何に「健康」として生活し、死を迎えたいと思っています。ガンのリスクと言われている喫煙や大酒、運動不足などなど・・・。ガンのリスクを回避する生活習慣を励行しても事故や紛争で・・・。「生きる」と言う事がどう言う事なのか!?その「生きる」事へのガンゲノム解析の進歩をどう捉えて良いのか分からなくなって来ています。乳がんのリスクがあると判明した米国女優が乳房を摘出したと聞きましたが、ゲノム解析において、ガンリスクのわかることが果たして良いものなのかどうか!?質問となっていませんが!

(回答:鈴木穣)
物理化学現象として人間の生を理解し尽くしたとしても無駄ではないか、とのご意見は至極真っ当なお考えと思います。仰る通り、人間が死なないようにすることはできません。なぜなら、形(構造)あるものは必ず形を失うからです。その意味では、ピンコロを目指して、有限の生をより良い生にするために少しだけ時間稼ぎをしているにすぎないのかもしれませんが、意味はあると思います。たとえ稼いだ時間が短い時間であっても、その時間で一人一人が自身が生きている意味を考え、見つけることができたなら、その人にとって計り知れないくらい大きな意味があるはずと思います。その時間をつくってお手伝いするのが、医療という営みの一つの側面ではなかろうかと思います。色々なことが、まだ理解する研究の段階にありますが、その先にこそ治す時代が来る、と思っております。実際、10年前だと治療法がなかった患者さんも助かる事例が増えてきてもおります。また、患者さんにそのような希望を与えること自体も私たちの使命、と思っております。ピンピンコロリ、でも長く充実した人生の方がもちろんよいですので!


質問6データ循環という意味では久山町コホートが日本のロールモデルになるのではないかと思います。その他にもあるかもしれません。参考にする際のスタンダードにはならないのでしょうか。ゲノム、癌は別なのでしょうか?

(回答:川嶋実苗)
久山町でもゲノム解析は実施されていますが、全国規模で、久山町の手厚い健康づくり・共同研究体制を実現するには、マンパワーを含め、限界があるように思います。

日本では、久山町を含む住民を対象とした一般住民コホート研究や、病院の受診者を対象とした疾患コホートが実施されております。大規模な住民コホートとしては東北メディカルメガバンクの規模は突出していると考えられます。それらのコホートや病院等において収集された試料や情報は、バイオバンクという形で共有化が図られていますが、バイオバンク毎に目的や、試料・情報の利用ルールが異なっているので、横断的に検索し、一括申請できるシステムを現在構築中です。

質問7本日議論されている複数データの発行/保有/運用/利用/検証/保守/流通の統合的な管理機能はどのように構築され得るのか?自律分散協調か集中かといったデジタル個人情報保護の議論は、大学でのデジタルアイデンティティー(Decentralized IdentifiersVerifiable Credentials骨格、ID管理FTA構築等も?)や、生涯蓄積される可能性のあるこれからの(就学前からリカレントまでの)学習ログや人事プロセス含むHRtechデータの制度設計で問われている論点とも共通の課題があるのでは?本日議論されたスマートシティ(スマートモビリティ、スマートホーム等)で自然に収集される環境情報、生体データとともに、個人が生成するmHealthシステム(未病が実現した場合には更なるニーズが出るかもしれないQoLをサービス化するためにも求められるePROや主観的評価のためのPGHD、加えてDtx、プログラム医療機器の副次的機能として収集される健康関連データ)はどのように関連するか?

(回答:土原一哉)
(ご質問3-2への回答と重なります)医療機関等にある診療情報を有効に利活用するために、「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(「次世代医療基盤法」)」がありますが、特定の個人を識別できないように加工された匿名加工医療情報を対象とするため、個人識別符号であるゲノム配列情報を含む要配慮個人情報は対象とされません。また情報銀行は本人の同意のもとで個人のデータを適切な事業者へ提供し、事業者から個人へ便益を還元する仕組みですが、ゲノムデータの利用は現在のところ行われていません。ただし、医療の世界では、患者本人がゲノム等を含む要配慮個人情報を提供することで便益を受ける可能性が高く、また新薬の開発など社会的な需要も多いことから、「個人を起点としたデータ流通」の仕組みを作ることは非常に重要です。個人情報保護、プライバシーの保護を含めた法規制等のルール作りが必要であるとともに、個人が預託したデータの利活用についてコントロールできる仕組み(ダイナミックコンセント)、データが適切に流通していることを保証(トラスト)する仕組みと、それを可能とする情報技術が重要です。また流通するデータの相互運用性(インターオペラビリティ)を高める標準化規格として、特に医療ヘルスケア分野ではHL7 FHIR (Fast Healthcare Interoperability Resource)が注目されています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15747.html


(回答:川嶋実苗)
ご指摘の通り、共通の課題があると考えられます。

理想は、ゆりかご(胎内)から墓場までの全てのデータを繋げられるようにして1個人を全人的に捉え、健康状態から未病状態への揺らぎを検出することで、早期治療による医療費削減、また、蓄積されたデータを用いた医学研究の促進により健康づくり・医療の発展による恩恵が国民に還元されていく、という事なのであろうと思います。