「サステイナブルな社会をデザインする」とは?
Q&A
イベント時間内にお答えできなかった質問についての回答を掲載しています。
たくさんのご質問をありがとうございました。
カーボンニュートラルを達成するために技術的だけでなくコスト的・経済的・社会的な実現可能な具体的な移行パスを設計することは極めて重要だと思います。しかしその一方で、省エネ・リサイクル・廃棄物利用以上のDACなどの施策は、企業にとってコストにはなっても商品やサービスの付加価値を高めることにはなりません。ESG投資をどのように回収すればよいのでしょうか?下手をすれば株主訴訟にもなりかねません。ましてやグリーン成長が期待できるのは一部のコンサルタント業などの一部の企業に限られるのではないのでしょうか?
またネガティブ排出としてCCSなどが検討されていますが、二酸化炭素の分離圧入は非常に大きなエネルギーを消費するので資源枯渇から考えますと化石資源の消費は大きくなりサステナブルではなくなるのではないのでしょうか?
ご質問ありがとうございます。大変重要なご指摘と受け止めました。ESG投資の回収については、金融業界関係者の方々からも同様のお悩みを耳にします。ESG投資が日本より浸透している欧州や米国の一部の州の話では、ESGで問題が発生した企業に対しては不買運動が起きる、あるいは優秀な若手が就職先として選んでくれない、ということで結果的に株主にとっても不利益な結果となるようです。つまり、日本でも企業にとってESG投資がメリットとなるためには、それを理解する消費者や一般市民の存在が不可欠と考えています。(亀山康子)
ロシアのウクライナ侵攻で天然ガスなどの化石資源高騰で実質的に高いカーボンプライシングをかけているのと同じ状況になっています。それにも関わらず、世界経済は成長どころか大混乱しています。果たしてCO2削減にどれほどの効果があったのでしょうか?
また高騰するガソリン代や灯油代電気代の状況の中で政治的にカーボンプライシングでさらに消費者に負担を求めることは可能でしょうか?
ご質問ありがとうございます。ご指摘の点は、カーボンプライシングに関する議論に大変重要です。カーボンプライシングの主な目的は、エネルギー全体の価格を上げるというよりは、異なる種類のエネルギーの間で、炭素含有量の違いによって相対的な価格差をつけることです。制度設計によって効果にも差がありますが、炭素含有量の高いエネルギーを使わずにすむ代替策/技術が選択可能であること、また、税収を貧困家庭に回すなど社会的公正に配慮していること等の条件が満たされている場合ほど、人々に受容されやすく、効果も出やすいと言えます。(亀山康子)
CNやSDGsなどの旗印のもと、世界は持続的繁栄に向けて舵を切っていますが、この「世界」に「日本」は入ってないのではないかと大変心配になることがあります。世界に並んでやっていくと同時に「日本の国内産業を守りながら」という視点もまた持続的繁栄には重要だと思います。そういう観点はありますか?
貴重なご指摘をありがとうございます。持続的繁栄の条件の中に経済活動を含めるという点も、当然ながら含まれております。ただし、今の産業をそのまま「守る」ことが長期的な繁栄につながるかどうかは検討が必要と考えます。持続的繁栄のためにも、今の経済活動を変えていく必要があるかもしれません。Just transtion(公正な移行)という概念で議論されます。(亀山康子)
お隣の東京理科大学でも、2023年にサステナブルアーバンシティーセンター(仮称)を立ち上げる予定だそうです。交流や連携は視野にありますか。
ご質問ありがとうございます。現時点でなんとも申し上げられませんが、具体的な情報を頂けましたら有難く思います。よろしくお願いいたします。(出口敦)
亀山先生のお話で日本とロシアのサステナブルの意識の低さについてありましたが、社会システムのチェンジをしていくなかで、個人として問題意識として行動を起こすには何をしたらいいのでしょうか。
貴重なご質問をありがとうございます。気候変動以外の問題に共通していえることとして、知識があっても行動につながらない、という課題があります。幼年期の教育や、家庭での親の何気ない会話にも、要因があると言われます。(亀山康子)
カーボンニュートラルについて、例えば、生産活動におけるCO2排出量が問題となっていますが、生命活動(呼吸)におけるCO2排出量も、ニュートラルの対象として考慮されているのでしょうか?
呼吸における二酸化炭素排出は、生物が摂取した食料から生じたものであり、食料に含まれる二酸化炭素は、元々は光合成でできたものですから、循環していて、大気中の二酸化炭素濃度の増加に寄与するものではありません。そのため、呼吸はカーボンニュートラルで考慮する必要ありません。(亀山康子)
電力市場において送電線を整備して完全市場を作れば、電力の同時同量の電力の安定性を確保でき、いくらでも再エネは系統接続できると経済学者は考えておられるのですか?変動再エネが増加していくと、価格が上昇しても供給力を増やせず、また需要は価格弾力性が低いので、電力市場での需給調整機能は働かないのではありませんか?
また系統接続するのに調整力が必要な太陽光や風力などの変動再エネと、調整力ともなる火力発電の電力の品質は同じなのでしょうか?
再エネの特性を考慮した上での最適な電源構成については、どのような視点を重視するかにより、経済学者によっても様々な考え方があるかと思います。私は個人的には質問者様のお考えに近い考え方をしております。また、頂いたスポット市場での電力需給に加えて、容量市場がうまく機能していない中でどのように発電企業に対してピーク対応電源への設備投資・保持のインセンティブを作り出すかが大きな課題だと考えています。(渡辺安虎)
石井先生もご指摘があったように、日本はすでに出遅れている(指標、感度、実行いずれも欧州が先行)ように感じています。円安や論文数の減少など、日本が本分野で生き残るのも実は厳しいとも感じていますが、そうした中でも、日本の優位性やアドバンテージがあるとしたら、どのような点だとお考えでしょうか?
重なご質問をありがとうございます。気候変動に限らず、日本全体の課題をご指摘いただいたと受け止めます。日本の優位性について、今後センターで議論していきたいと考えます。(亀山康子)
一般家庭向けにハウスクリーニングや整理サポート事業を行っているものです。サステイナブルな社会の実現に向けて、経済活動や社会システムの転換以外に、私たちのような清掃整理業や例えば訪問介護など、一般家庭に訪問し深い関係性を持つ企業はどのようなことができるでしょうか。
重要なご質問をありがとうございます。一般のご家庭に訪問する機会があるお仕事に合わせて、各ご家庭のエネルギー使用料を減らす提案などができたら良いと思われます。家庭エコ診断https://uchieco-shindan.jp/katei/ が参考になるかもしれません。(亀山康子)
サステイナブル社会の実現には、個々人のQOLの向上が一体であることが必要だと思うのですが、この2つは一体になりえるのでしょうか。
ご指摘のとおり、一般的に、サステイナビリティ(持続性)の構成要素として、環境、社会、経済、そして個人のウェルビーイング(幸福)の4つがあげられます。国際的な世論調査を見ると、経済的に比較的豊かでなくても幸せを感じている人が多い国もあれば、経済的にはゆとりがあるにも関わらず幸福だと回答する人が少ない国もあり様々です。人々の主観と、定量的に測れるものとの因果関係は、一つの重要な研究テーマです。結論は出ていません。(亀山康子)
システムはさることながら、マインドチェンジについて。ひとりひとりのサスティナビリティマインドに訴えかけるようなアプローチは研究されているのでしょうか。例えば、「次の世代によりよい環境を残す」などの生物の本能に基づくようなことについての。
次世代に何を残すのか、残すべきと考えるかということ自体が、近年、国際的にもホットな研究テーマになっています。亀山の前職である国立環境研究所では、世代間公平性をテーマに研究プロジェクトをたてています。(亀山康子)