Q&A
イベント時間内にお答えできなかった質問についての回答を掲載しています。
たくさんのご質問をありがとうございました。
安全性面では乗車している人への電界/磁界ばく露がどのようなレベルであるのかが気になりました。機器の設計にあたり、ICNIRPガイドラインや電波防護指針との適合性の評価も行われていると思いますが、コイルの位置ずれ等が生じた場合でも適合性に問題はないという理解でよろしいでしょうか?また、用いられる周波数についてもご教示いただければ幸いです。
仰る通りでICNIRPガイドラインに適合性の評価をしております。位置ずれによらず,乗車人員へはICNIRPガイドラインに対して全く影響がないレベルです。停車中ワイヤレス給電の国際規格である85kHzを使っております。
再エネの変動する余剰電力でモビリティを充電することはできるのでしょうか?
余剰電力も再生可能エネルギー起源では変動すると思うが、そのような変動する電力でモビリティーの充電ができるか否か、とご質問の意図を捉えました。再エネで変動する電力は基本的にならしておく必要があると考えますが、余剰がどの程度変動するか、その時の需要はいかほどか(ここではモビリティの充電)によると思います。なお、e-fuelにはならしの効果もあり、電池とのバラン、対象とするシステムの電力の需給などを考慮して自動車、エネルギーシステムを含めて設計、運用の最適化を行っていく必要があると考えています。
国際海運についてアンモニア船の話がありましたが、内航は電気推進と棲み分けされていくのでしょうか。サプライチェーンやインフラ整備等の観点からは共用化していくほうが良いと思いますが、いかがお考えでしょうか。また船齢高齢化の一因は船価が高いのもあると思いますが、低価格のための方策、コスト負担をどこに求めるか、といったところにアイデアはございますでしょうか。
おっしゃる通りエネルギーのサプライチェーンやインフラを外航と内航で共有できたら効率化できると思います。将来的にはそちらを目指していくことになると思いますが、内航/外航間における財務状況・船員の教育レベル・船舶の大きさのギャップを考慮すると、内航はまずはディーゼル発電機を活用したハイブリッド電気推進、外航はLNGやアンモニア等の次世代燃料への挑戦という構図がしばらく続くと考えております。
船価の低減のために、ありきたりではありますが標準船型の普及を目指しています。(姉妹船を増やすイメージです)これにより、設計コストの圧縮や、舶用機器のまとめ買いによる低コスト化を狙っています。ハイブリッド船における電池についても、国産にこだわらず海外で高性能かつ安価なものがあれば積極採用するようにしています。最近は国産電池も価格競争できるレベルのものが出てきているので、今後の動向に期待しています。
また新造の場合には、国からの補助金を使うという手もありますが、申請・報告の負担、新技術導入の部分のみに適用されて船価全体への補助金取得は難しい等実際の社会実装に向けては、補助金制度の見直しの必要性も感じています。
EV船の運航は電力給電が不可欠と思いますが、港側にそういった給電インフラはもともと備わっているものなのでしょうか?それとも専用で敷設されたんでしょうか?
今年就航したEVタンカーにつきましては、川崎市夜行町のバースをホームとしておりますが、そちらには給電設備がなかったため、東京電力さん、川崎市の協力のもと、給電設備を新設いたしました。今後内航貨物船への陸上電源の供給を進めるためには、港側の給電インフラの整備が不可欠ですが、こちらの進捗は芳しくありません。現在、国交省、経産省、環境省と私たちのような民間企業でCNP(Carbon Neutral Port)実現に向けたインフラ整備の検討を開始しております。
現行のEVタンカーの航続距離は?
タンカーに太陽電池を乗せれば航続距離を伸ばせますか?
帆船のように風力を利用することは考えておられますか?
EVタンカーにつきましては、バンカー作業を含むため、日中の航行+荷役のためのカーゴポンプ運転に必要な電力をすべて含めて電池容量を決定しました。その内容は、バンカー作業を含めて8時間から10時間沖に出る、航行に関しては平均8ノット、最大10ノット程度を想定しております。ゆえに、荷役を含まなかった場合、湾内の気象海象が穏やかな状態で8ノット、10時間程度が最大連続航行容量になるかと思います。
船舶に太陽光パネルを設置する試みは外航でも行われてきましたが、甲板スペースを広く使える自動車専用の外航船であっても2~3パーセントの燃費改善だったというデータもあります。内航船の場合、エンジンも小さいですが、甲板スペースに余裕がないため、パネルの設置も難しく、設置してもわずかな燃費への貢献しか期待できないことから、太陽光パネルは現状あまり普及しておりません。
風力については、外航船では現在ローターセールが注目を集めていますが、実装までは少し時間がかかると思います。内航については、帆を展張するタイプの風力装置を第二次オイルショックの頃に試みた実績はあるのですが、費用対効果があまりでなかったようで普及しませんでした。また、外航は何日間も、長い時には2週間以上航海をしますが、内航船は毎日出入港をする船がほとんどです。数時間の航海の度に帆を展張する労力、費用に対してやはりコストが見合わないという意見が多いのが現状です。
走行中給電の課金ははどのように行うのですか
これはサービス提供者の考えによります。定額制を採用する場合でも従量制でも,ある程度の通信を前提とすれば,課金システムの構成は可能でしょう。走行中ワイヤレス給電の技術の肝となる需給電電力制御は,ミリ秒以下の応答性が必要なので,超高速通信を前提としない開発に当研究室は成功をしています。課金システムは,そのような応答性は必要としません。例えば高速道路のシステムであれば,給電レーン手前にETCをつける程度でも実現可能と思われます。
走行中非接触給電の道路側のコスト、CO2排出をカウントしてもそちらのほうが有利でしょうか?
カーボンニュートラルの達成のために,自動車部門では走行中のCO2排出が許されなくなるという前提に立ちますと,大半の自動車の電動化が必要というのが多くの専門家の意見になります。この前提において,時間的にも空間的にも電力負荷が集中する急速充電を大量に配備したうえで,大容量バッテリを大半の自動車が搭載するような現行シナリオに対して,各車両のバッテリ搭載量を減らし電力負荷を分散させる走行中給電シナリオに利があることが試算されています。パネルディスカッションでもお示ししたように,走行中給電に必要な費用が効果を大きく下回るという国プロの成果があります(藤本他「電気自動車への走行中ワイヤレス給電」電子情報通信学会誌 Vol.103, No.10, pp.1030-1036, 2020)。またCO2排出が大幅に減少することは「O. Shimizu, S. Nagai, T. Fujita, H. Fujimoto: “Potential for CO2 Reduction by Dynamic Wireless Power Transfer for Passenger Vehicles in Japan", Energies, 13, 3342, 2020」等で発表をしています。実際には,急速充電・普通充電(有線・無線)・走行中無線給電(高速・街中)を上手に組み合わせていく社会が必要とされるでしょう。
走行中給電における課題として、送信側電磁波のノイズ対策についてどの様な対応をお考えですか?また、地中に埋めたコイル上に金属ゴミなどが乗ってしまう場合の発熱(発火)など危険はどのように考えていますか?
当研究室を含む多くの機関では,EVへの停車中給電で実用化が始まった磁界共振結合による無線給電と,同様な原理・周波数で走行中給電システムを開発しております。電磁波として送電する訳ではなく,磁界により電力を伝送するので,そもそもコイル間以外への影響は与えにくいシステムという特徴を持ちます。もちろん微少な発生ノイズの影響は測定をしており,総務省の規制値を下回ることを確認し,承認を得てから実験をしています。金属異物に関しても,交差点手前では停車中給電で使われているような検知システムを使うことになろうかと思いますが,高速道路の走行中給電システムに関しては,金属異物検知システムをより低コスト化できないかという研究も当研究室で行っています。
都市部においては電化による問題の解決がかなり図られるような印象を、素人ながら持ちました。これをさまざまな地域に展開するためには、さらにどのような技術や工夫が必要でしょうか。
走行中給電に関しては技術的に開発途中ではありますが、一方で世界中で実証試験が進められており、成功した国からは走行中給電の国際規格の提案も始まっています。大電力化・高効率化・高速化・小型化・低コスト化といった技術面の研究開発を極めつつも、思い切って実証試験を各地で始めるという勇気も大切かと思っています。失敗を恐れすぎるリスクを考えなければなりません。技術面以外にも、制度設計・メンテナンス・運用・課金など検討事項は多くありますが、「挑戦する心」が一番必要なのかも知れません。